杏 ~あんず~
「……ず。」
誰か何か言ってる…?
「…んず。」
でも何を言ってるのか分かんない…。
聞こえるのは音だけ…。
「杏っ!!」
「あ…、なんだ…帆乃香か…。」
「なんだ帆乃香かじゃないよ!!何度呼んでも気付かないんだから!!」
「ごめん…。」
「…や、別にいいけどさ。それより…、大丈夫…?」
大丈夫…?
何が…?
あぁ…、風戸くんのことか…。
「うん大丈夫…。ちょっと…、"大翔"に動揺しちゃったみたい…。」
「そっか…。」
「大丈夫か?杏?」
「うん…。達也もありがと…♪」
「…おぅ。」
それから学校までの間、気を遣ってくれたのか、風戸くんの話はしなかった…。