杏 ～あんず～

教室までの道が、今日に限って遠く感じた。


「……あーあ、達也もついに失恋か。」


「……悪かったな。」


心にズバズバと突き刺さる…。


ある意味毒舌だよな、帆乃香。


「長年の片想いも、今日で終わりだね。」


「……。」


「後悔してる…？」


後悔……か…。


「それはしてない。」


「ふーん……。」


「聞いといてそれかよ……。」


「別に…？引きずってウジウジされたらあたしが困るし。」


「いいんだよもう!!……どのみち叶わない恋だったから。」


「まぁ…、杏が達也を好きだったら、もっと前から付き合ってただろうしね？」


「あいつには……適わない。」


どんなに酷いことをしても、どんなに俺が手を差し伸べても、杏が選んだのはあいつ……風戸大翔なんだから…。


「ふーん？……あ、そうそう。」


「……？」


「あたし達也のこと好きだから。」


「………は…？」


「早くしないと遅れるよ？一応言っとくけど、次寺脇の授業だからね？あたし知らなーい♪」


「……!!おい帆乃香待て!!」


廊下を走り出した帆乃香を追いかける。


帆乃香が俺を好き…!?


……はぁ…っ//!?


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