らっく!!

「俺のことなら気にすんなよ」


「でもっでもっ!!」


やっぱり悪いよ!!


「気にするなら少しずつ返してくれればいいからさ。払わせて?」


愁は私の頭を優しくなでた。


私はとことん愁には敵わないなあ…。


「わかった…でも絶対返すからねっ!!」


「ハイハイ」


こうして愁のおかげでネクタイを買うことが出来たのだ。


「愁…ありがと」


店を出て真っ先にお礼を言う。


「どういたしまして。紘一さん喜ぶといいな?」


「うんっ!!」


愁ってば優しいなあ…。


「これからどうする?」


「私の用事は済んだし愁の行きたいとこ行こ?」


「そーだなー。じゃあまた映画にでも行く?」


「いいよ」


そう言うと愁は先ほどとは打って変わって意地悪な笑みを零した。


「今度は泣かないやつな」


あの夏の恥がまざまざと蘇る。


「泣きませんっ!!」


もうっ!!蒸し返さないでよ!!


若干不機嫌になった私の手をとり愁は歩きだした。


「怒ると可愛い顔が台無しだぞー」


むぅ…。


「どうせ可愛くないですよー!!」


私は愁に向かって思い切り顔を膨らませた。


「機嫌直せよー」


ふーんだっ!!


私はプイッと愁から顔を背けた。


結局、また泣ける映画を見て号泣するまで私の機嫌は直らなかったのでした…。


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