らっく!!
差し伸べる人
「今日からここが愁のお家よ」
母親はそう言ってまだ幼かった俺の背をそっと押した。
自分の家だと示された家はバカみたいにでかくて、幼心にここは今まで自分が住んでいた世界とは違うということを知った。
出迎えてくれた人間は皆同じような眼をして俺を睨んでいた。
いないと思ってたんだ。
俺を受け入れてくれる人なんてこの世にはいないと思ってた―…。
「っ…頭…いた…」
朝起きて真っ先にそのことに気がつく。
自分で発した言葉が妙に頭に響いた。
…風邪だな。
早々と結論づけると俺はカーテンも開けずにそのままベッドに寝返りを打った。
…昔の夢を見ていた気がする。
しかも寝覚めが悪くなるような思い出したくない類の。
チラリとベッドサイドの時計を見る。
この時間なら美弦も起きているはずだ。
声が…聞きたかった。
どうしてかわからない。
理由を考えるのも酷く億劫だったし、今はそんなことは関係ない。
俺は迷わず携帯をとった。