らっく!!
月だけが知っている
「ねぇ…もうちょっと離れて…?」
「なんで?」
いや、なんでって開き直られても。
「落ち着かないよ…」
腰に両腕をまわされて、肩に顎をのせられた体勢でどんな料理を作れると思ってるのか…。
「嫌…?」
嫌というか恥ずかしいんです!!
その言葉すら愁の不安げな様子にグッとこらえる。
「嫌じゃない…」
うぅ…。
私は仕方なく同じ状態で黙々と作業を再開した。
みるみるうちにご機嫌になった愁は更に腕に力を込め密着してきた。
髪が首筋にあたってくすぐったい。
耳には愁の息づかいか聞こえて心臓がどうにかなってしまいそう。
あー!!やっぱり落ち着かないっ…!!
包丁を握る手が軽く汗ばむ。
今にも怪我をしそうで冷や汗が背中を伝う。
甘えられるのは嬉しんだよ?
でも今日はさすがに緊張する…。
そう、今日はクリスマスイブ。
約束の日…。
紘一さんから渋々ながらもちゃんと許可をもらった私は愁の家に両手一杯の食材と共に到着。
ほらクリスマスだし?
折角だから手料理なんか食べさせてあげたいなと。
そう思っていた矢先にこの状況…。