らっく!!



「愁っ…!!」


待ち合わせをした公園にはスーツ姿の愁が既にいた。


私は愁の姿を見つけるとすぐさまその胸に飛び込んだ。


久しぶりの愁の温もりが心地いい…。


「ホントに心配したんだから…」


背中に腕を回す。


そうすると愁がぎゅうっと強く抱きしめてくれた。


それが嬉しくて私は愁の胸に顔をうずめた。


…それもつかの間だった。


愁は私の肩を掴み強引に体を離した。


「愁…?」


どうしたの…?


訳が分からなくて愁の顔を見つめた。


いつも眺めている顔と同じなのに…。


…何かが違った。


愁の表情は今まで見たことがないくらい険しく、冷たかった。


そして…気づいた。


「ねえ…私があげたピアス…どうしてつけてないの…?」


あの時嬉しそうにつけてくれたのに…。


外さないって言っていたのに…。


耳たぶにはピアスの穴が虚しく残されていた。


「美弦…」


愁が私の名前を呼ぶ。


…だめ。


これ以上聞いちゃいけない…っ…。


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