らっく!!
それからの日々は本当につらかった。
「ねえ…あれ…」
ふとした瞬間に聞こえてくるヒソヒソとした話し声。
「やっぱりな…」
無遠慮としか思えない舐めるような視線。
愁と別れたことはとっくに広まっていて、既に全校生徒の話題の的になっていた。
「ほら…あの子だよ…」
「やっぱりね…気まぐれだったのよ…」
そういった話が耳に入る度に心の奥がズキンと痛む。
「好き勝手なこと言いやがって…」
隣を歩く凪ちゃんもいつも被ってる猫がとれかけている。
「凪ちゃん」
小さく声をかけると凪ちゃんは慌てて外れかかっていた優等生の仮面を被りなおした。
「ったくコソコソと陰気臭いのよ!!この学校の連中は!!」
凪ちゃんは苦虫を噛み潰したような顔で後ろを見やる。
「いいよ…ホントのことだし…」
私は今にも噛み付きそうな凪ちゃんをそっと宥めた。
コソコソと噂されることにはもう慣れた。
なにより一番つらいのは…愁に会えないことだから。
同じ校内にいてもすれ違うことも姿を見ることもできなかった。
こっそり右手で左手を撫でる。
まだ未練がましく私の左手の中指には指輪が光っていた。
心のどこかであのときの愁の気持ちは本物だと信じたかった―…。