らっく!!
第七章
それぞれの想い
「…ん……」
コトンと何かの音がして私はうっすらと目を開いた。
ここどこ…?
資料室の埃っぽい床の上ではない。
体にかかる重みは温かく、背にコンクリートの冷たい感触はなかった。
見覚えのある天井に次第に意識がはっきりしていく。
あれっ…ここって…。
「美弦っ!!」
肩を揺らされてその存在に気がつく。
「…凪ちゃん?」
目の前には凪ちゃんの整った顔が迫っていた。
普段は誰もが見惚れる笑顔なのに今はそれが歪んでいる。
「もうバカ!!美弦はいっつも心配かけるんだからっ!!」
頬に貼られた絆創膏が自分の行為の愚かさを改めて痛感させた。
「…ごめんね」
凪ちゃんの手の温かみがひどく懐かしい気がした。
「気持ち悪くない?どっか痛いところは?あんた一晩中寝てたんだよ?」
そんなに…?
周りを見渡す。
私は見慣れた高梨家の自室に寝かされていた。
白石に体を触られて頭を殴られた…。
それから…?
気絶して…。
だめだ…。
思い出せない―…。