らっく!!
「愁様、着きました」
高屋家お抱えの運転手の声で俺はまどろみの中から目を覚ました。
「ここで待ってろ。直ぐ戻る」
そう命じると運転手ははいと返事をした。
車から出ると冷たい空気が俺の周りにまとわりつく。
それに文句も言わず、通りを真っ直ぐ歩く。
見慣れた道のり。歩き慣れた道のり。
そしてしばらくしてその足を止めた。
俺は2度と足を踏み入れるまいと心に誓ったはずの高梨家の前に立っていた。
今更何をしようというんだ?
そう自分に問いかけてみても答えは見つからない。
ただ、いてもたってもいられなかった。
俺は意を決して高梨家の門を叩いた―…。