らっく!!


がらんとした廊下に響く自分の足音がひどく大きく聞こえる。


高梨家の使用人は予想とは裏腹にすんなりと俺を入れてくれた。


追い返されるくらいの覚悟はあったのに…。


目的の部屋は廊下の一番奥。


この家の中で最も日当たりが良くて、広い庭が見渡せる場所にある。


…美弦の部屋だ。


部屋の前で大きく息を吸う。


もしかしたら会った瞬間に悲鳴でもあげられるかもしれない。


あんな目にあった後だ。


俺には会いたくないかもな…。


その考えに達したときノックをしようとしていた手が止まった。


それでも。


…それでも俺は自分の目で美弦の無事を確認せずにはいられない。


美弦の部屋の扉をノックする。


暫く待ったが返事はない。


俺はその扉を開いた。


真っ先に目に飛び込んできたのは少し痩せた美弦の姿だった。


「美弦…」


ベッドに横たわっている美弦の顔は青白かった。


その頬を温めるように撫でる。


「美弦…っ…」


無事でよかった―…。


心の底から安堵する。


抱きしめたかった。


本当はいつだって。



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