らっく!!
「ごめんな…」
守ってあげられなくて…。
ベッドに跪き美弦の手を握る。
口の端に貼られた絆創膏が痛々しかった。
情けない…。
何のために離れたんだ?
自分の無力さが本当に情けない。
「ん…しゅ…う…」
寝言でさえ俺の名前を呼ぶ美弦に更に愛しさがこみ上げる。
愛してる―…。
もう伝えられない。
俺は美弦の手を離しその唇にそっと口づけた。
愛してる―…。
その気持ちは嘘じゃない。
今でも―…。
「さよなら…美弦…」
これで最後だ。
こうして会うのもこれで最後だ。
もう一度その小さい体を抱きしめて愛してると囁けたらどんなにいいだろう?
傷つけるとわかっていても、もう一度抱いてしまえたらどんなにいいだろう?
嫌いになんてなるわけないんだ。
きっと俺は美弦以外の人を好きになることはない。
そう思えるほど好きだった。
いや好きだ。
最後に美弦の可愛い寝顔を目に焼き付け俺は部屋をでようとした。
そのとき、ふとテーブルの上にあるものに気づいた。
俺があげたシルバーリング。
まだ持っていたのか…。
こんな小さな指輪ひとつでどうして美弦の未来を縛れるなんて思ったんだろう?
自分の幼稚な考えにふっと自嘲の笑みがわく。
「馬鹿だな…」
そう言って俺は美弦を起こさないように静かに部屋を出た。