らっく!!



「てめぇ…っ!!」


言いたい放題言う匡人に思わずカッと頭に血が上って俺は匡人の体を押しのけてその頬を殴りつけていた。


「美弦には手を出すな…っ!!」


俺が必死で守ろうとしていたものを他の誰かが奪うなんて許さない。


何もしらないくせにっ!!


俺がどんな思いで別れたか知らないくせにっ!!


「…それがお前の本心かよ」


ポツリと呟かれたのは予期せぬ言葉だった。


今更、匡人に試されていたのだと気がつく。


「もう一度聞く。何があった?」


再び睨みつけ始めた匡人に怯むことはなかった。


「…もうやめろ。俺の周りをうろちょろするな」


俺のことを調べたって無駄だ。


俺はもう戻れない。美弦の元には戻らない。


「…んだよ…その眼……」


俺の眼は昔のように誰も受け入れない全てを拒絶していたころの冷たい眼に戻っていた。


見られたくなくて少しだけ眼を伏せる。


やっぱり同類だな…。


俺と匡人は…。


だからこそ託せるかもしれない。


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