らっく!!
Be With You
「愁、行くぞ」
兄貴は秘書からチケットを受け取りながら俺を呼んだ。
「わかりました」
人混みをくぐり抜け、搭乗口を目指す。
電光掲示板には俺が乗る予定のニューヨーク行きの飛行機が搭乗を案内されていた。
今から兄貴とアメリカに渡る。
実感はない。
一度日本を発ったらそう簡単には戻ってこられない。
それなのに俺の心には郷愁なんて微塵もなかった。
俺が選んだ道だ。
ただ―…。
「馬鹿だよな…」
未練がましく後ろを振り返ることをやめられない。
来ないとわかっていてもついつい探してしまう。
「早くしろ」
兄貴は再び俺を呼んだ。
さっきからこの2ヶ月の間に起こった様々な出来事が浮かんでは消えていく。
俺に示された道はひどく残酷だった。