らっく!!



正月は親父を罵る親戚の声を聞きながら過ごした。


兄貴から一転して俺を後継者にすることは親戚中から非難を浴びた。


…おれ自身も非難を浴びせてやりたかった。


それが出来なかったのは傍に付き添う兄貴と、親戚達を一喝する親父がいたからだ。


「どうして…俺が…?」


一度だけそう親父に尋ねてみた。


「お前には夏輝にはない目がある。既成観念に囚われない斬新な頭脳が要るんだ。これから先の未来にはな」


未来…?


俺の未来ってなんだっけ…?


真っ先に美弦の顔が浮かんできた。


俺はそれをかき消すようにぎゅっと眼を瞑った。


親父と兄貴の想いが痛いほど伝わってくる。


高屋の人間ではない俺を後継者にしてまで賭けてくれた。


その期待を裏切ることは…出来ない。


美弦…っ…。


俺が高屋の後継者になることを受け入れるということは、そのまま美弦との別れを意味していた。


俺は震える声で美弦の携帯に電話をかけたー…。


会いたいと言うと素直に応じてくれた美弦にいまから別れを告げなくてはいけないと思うと胸が締め付けられた。


どうして俺はこんな形でしか愛情を示してあげられないんだろうか…。


ごめんな、美弦…。



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