らっく!!
「あっその唐揚げうまそう!!」
高屋先輩は私の箸に挟まれた唐揚げを指差した。
「よかったらどうぞ?」
高屋先輩は弁当箱を差し出すと嬉しそうに唐揚げをつまんだ。
「ありがと」
高屋先輩は唐揚げを頬張りながらも持っていたパンを食べ終わってしまった。
「あ~美味かった~」
そう幸せそうに呟いた高屋先輩に疑問が湧く。
「高屋先輩は食堂行かないんですか?」
「ん―?愁でいいよ?あそこのメシまずいじゃん」
「はあ…」
コックさんが聞いたら泣きそうだなあ…。
「でも唐揚げは美味かった。ごちそ―さま」
愁先輩は立ち上がった。
「あっいえ…」
「じゃあね美弦ちゃん」
愁先輩はそう言って爽やかに消えていった。
不思議な人だったな…。
まだ半分以上残っているお弁当を私は1人黙々と食べ始めた―… 。
この時の私達は…
まだ知らない――…。
この出会いがこれから先、大きな意味を持つなんて…
まだ、誰も知らない―…。