らっく!!

浮かび上がっているのは黒いシルエット。


唇をきつく結んで靴箱に寄りかかっているのはまさしく、愁先輩だった。


どうしているの…?


会いたくなんてなかったのに…。


「美弦ちゃん?」


先輩が固まっていた私に声をかける。


「…先輩…どうしたんですか…?」


どうしよう…声が震える…。


会話の仕方を忘れたみたいだった。


「大原が…今日は美弦ちゃんが1人で帰るから送ってやれって…」


凪ちゃん…気持ちは嬉しいけど…。


凪ちゃんのお節介も今の私にはまだ早かった。


「大丈夫ですから…」


私は先輩の隣をそのまま通り過ぎようとした。


「待てよっ!!」


先輩は声を荒げ私の肩を掴み、自分の方を向かせた。


先輩怒ってる…?


こんな怖い顔した先輩は見たことがなかった。


「先輩…痛い…」


掴まれた肩が痛い…。


我慢できずに思わずそう洩らす。


「あっ…ごめん…」


慌てて肩から手を離してくれた人はいつもの先輩だった。


私と先輩はお互い何も言わずに向かい合った。




「……帰ろっか……」


沈黙を破ったのは先輩だった。


「…はい…」


私も今度は素直に頷いた―…。

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