Bar GRANT
なにはともあれ、すれ違う人々は皆、俺とは対照的に楽しそうな顔をしていた。
「…いいねぇ、幸せそうで」
意味もなく、通りに面して構える店に、片っ端から足を踏み入れてみる。
洒落たスーツなんて着てるから金があると勘違いされて、ブランドショップの店員が次々寄って来る。
ヒマ潰しにセールストークを聞いてみるけど、期待したよりも物欲は湧かず、楽しくもなかった。
結局、こんなもんか。
たいした気分転換にもならなくて、俺は次の店をスルーして、細い路地へ続く角を曲がった。