Bar GRANT



なにはともあれ、すれ違う人々は皆、俺とは対照的に楽しそうな顔をしていた。



「…いいねぇ、幸せそうで」



意味もなく、通りに面して構える店に、片っ端から足を踏み入れてみる。



洒落たスーツなんて着てるから金があると勘違いされて、ブランドショップの店員が次々寄って来る。



ヒマ潰しにセールストークを聞いてみるけど、期待したよりも物欲は湧かず、楽しくもなかった。



結局、こんなもんか。



たいした気分転換にもならなくて、俺は次の店をスルーして、細い路地へ続く角を曲がった。





< 119 / 224 >

この作品をシェア

pagetop