Bar GRANT



チラリと視線をやると、女性のバーテンダーはもう、何事もなかったかのようにグラスを白い布で拭いていた。



「あ、あの、大丈夫ですか。痛かったでしょ」



恐る恐る声をかけると、彼女は、



「何ともありませんわ。どうかお気になさらないでくださいね」



と笑みを浮かべた。



「…ほんとすいません。でもどう考えてもおかしいんです。あの日、カメラなんて回ってなかったし」



どうしても納得がいかず、俺はしつこく食い下がった。




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