Bar GRANT



「何になさいますか?」



「ブラッディマリーを」



「かしこまりました」



カウンターの女バーテンダーは、ゆっくりと言葉を発し、上品に微笑んだ。



彼女の向こうでは、背の高い男がシェーカーを振っている。



誰のカクテルだろうか…―



カウンター席には、俺しか座っていない。



さりげなく後ろを振り向いてみると、いちばん奥のテーブル席に、ひとりの客が俺に背を向けて座っていた。



暗くて初めは気づかなかったが、ぼんやりしたシルエットを見る限り、どうやら女性のようだった。




< 40 / 224 >

この作品をシェア

pagetop