Bar GRANT
「……さま、お客様、大丈夫ですか?」
肩を揺さぶられる感覚に、俺はハッと顔を上げた。
「あ、ああ、大丈夫…大丈夫です。で、どこまで話しましたっけ」
バーに入って数時間、俺はただひたすらに飲み続けた。
『もうおやめになったほうがよろしいのでは』
と心配そうな眼差しを向ける女バーテンダーにレッドアイをオーダーして、
『俺の悲惨な話を聞けば、今夜のヤケ酒の意味がわかるはずだ!』
と叫んだところまでは覚えている。
でもその先、何をどこまで話したのか、いつ突っ伏して眠ったのか、まるで記憶になかった。