Bar GRANT



どうやら俺は、とんでもない勘違いをしていたようだ。



2年前の雪の夜、駅のホームで女を見つけたのは、偶然ではなかったらしい。



たしかにあのとき、目の端が光ったような気がしたことは記憶にある。



でもそれは、雪に電車のライトが反射しただけくらいにしか思わなかった。



まさか、あのときからすでに、俺の殺害計画が始まっていたとは。



「だけど、この男性はなぜ自分がこんな目に遭っているか、わかっていらっしゃらないようでしたね」



「…残念ですわね」



ふたりのバーテンダーの声には、呆れにも似た響きが含まれていた。





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