Bar GRANT
何もかもを奪われて、そりゃあさぞかし、俺が憎かっただろう。
だけどこんなことする前に、話し合いたかった。
出会ったそのときに、すべてを話して欲しかったな。
そうしたら俺、きちんと償って、もっとマシな大人になってたかも。
愛する年上の彼女のために…―
「さよなら」
響きは冷たくても、鈴のようなこの声は紛れもなく、先週まで愛していた女のものだった。
さよなら。
俺はピクリとも動かないまま、声なき声で別れを告げた。