Bar GRANT
「さあ、お客様、いかがですか」
それまで寡黙だった男のバーテンダーが、事切れる寸前の俺のそばに来た。
「お望みが叶うご感想は」
時間も金も心も、すべてをリセットしたい。
その望みが今、叶ったのです…―
「どうぞごゆっくり、お休みください」
そして男バーテンダーは俺の肩にそっと手を置いた。
すると俺は呼吸が急に楽になって、一度だけ、すぅっと大きく息を吸った。
最期の深呼吸だった。