Bar GRANT
女は、ふたりのバーテンダーにやさしく微笑んだ。
すべてが終わった安心感から、自然にこぼれた笑みだった。
「あなたたちのおかげよ、ありがとう」
「わたくしたちはほんの少しお手伝いをしただけ。あなたもこちらの男性も、願いを成し遂げられたのは、おふたりの強い想いがあったからこそ、ですわ」
女がバーを出ると、雪が降っていた。
まるで、駅で出会ったあの日のように。
「さよなら、悪夢の2年間」
もう振り返らない。
女は扉の向こうに闇を残し、新しい1歩を踏み出した。
【第1夜 -完-】