リセット
「リセットしたんですよ。今日選んだ5段目は…いわゆるお金持ちの人生たちです。」

男は紙切れをこちらに見せながら言った。

アイはようやく飲み込めた。

私は今までの人生をリセット出来たのだ。

そして今から別の人生を歩める、願いが叶ったのだ。

「この人生って幸せです?」

「私、幸せになりたいんです。前の人生にはうんざり。できちゃった婚で結婚して7年。最初は優しかった夫も職場に女が出来てからは帰って来ても家族なんか相手にもしない。こっちは同居してあげてるのに。お義母さんに私が文句言われても知らんぷり。子供たちは可愛いんです。でもやり直せるのなら…良いんです!」

子供たちのことが頭を過ぎった。7歳と5歳と2歳の3人の息子。
みんなうまい具合に両親の良い所をとって端正な顔立ちをしていた。
少し鈍臭いところもあったが周りからは良い子たちと評判だった。



でもいいんだ。



きっと新しい人生でもまた私の元へ産まれてきてくれるはず。


「ねぇ名前も一緒ってことは登場人物も大体同じなんですか?」

「まぁ大抵はそうですね。」

「…ですが今回は結婚なさらないようなので旦那さんとお子さんたちは出て来ません。」

「あの、気になっていたんですが‘今回’とか‘お帰りなさい’とか、これって何回もできるんですか?リセット。」

「はい。いつでも何回でも。」


アイは早くページをめくりたくなった。
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