愛しの black panther
「まったく、龍也は素直じゃないね」
「ちっ」
と舌うちする龍也をよそに、葵が楽しそうに言う。
「だってその上着、龍也のだからね♪」
「えっ、そうなの?結構優しいとこあるんだ、龍也ありがとう」
ニコッと笑って龍也にお礼を言うと、更に顔を赤らめる。
「あっ!また赤くなった、やっぱり可愛いね龍也は」
クスクスと笑うあたし達に、「くそっ、見んなてめぇら!」と顔を隠した。
穏やかな時が過ぎていく…しかし、またその一方で、決断の時も刻一刻と迫っていた。
―――…
――…
「龍也、豪が勘づいたみたいだよ、動きがあったみたい」
″アッシュ″の溜まり場も少し慌ただしさを見せていた。
―豪が来る―
そう思っただけで、急にドキドキとあたしの鼓動が速くなる。
「なんか緊張してんねあやめさん」
ひきつるあたしに、葵が優しく微笑みかける。