愛しの black panther

「"ライズ"のお出ましだ」



ぼんやりと窓の外を眺めていたあたしに、葵がポンと肩を叩いて言った。



倉庫の前に無数のライトが見える。



「あれって…」



「豪達が来たみたい、それにしても来るの早いよね」



くっと笑ってあたしの方を向いた。



「愛されてんね、あやめさん」



「…うん」



「うん、って言っちゃう?!何か複雑だな俺…」



寂しげに微笑んだ葵は、「行こっか」と歩き出した。



あたしも後に続き、歩き出した…ドキンドキンと高鳴る胸を押さえながら。



───…
──…



二階から下に降りると、倉庫のシャッターが開けられていた。



大きく開かれた入り口、その向こうに見えるバイクに車の集団。



─ヴォーン!!ヴォン!!



互いに大きく爆音を響かせる。



その緊迫した光景に、これが彼らの世界なのかと自分の愚かさを呪った。



全ては自分の所為なのか…。
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