愛しの black panther
足がすくんで動けない。
そんなあたしを見かねて、すっと葵が背中に手をやり微笑む。
「大丈夫だよ…あやめさんの思うようにすればいい」
「心のままに…ただそれだけだ」
いつの間にか隣に立った龍也が言う。
「うん…」
あたしは頷き、前を見据えてその時を待つ、しかし身体は小刻みに震えていた。
しーんと静まり返って空気が変わる。
みんなのぴりぴりとした緊張感が伝わり、あたしは立っているのがやっとだった。
バタンと車のドアが閉まる音。
ゆっくりと近づいてくるシルエットを目にし、あたしの心はきゅうっと痛む。
苦しいよ…仁兄…ごめんね。
あたし…豪のこと…。
あたし達の前に立った豪が、ふっと笑って口を開く。