愛しの black panther
豪はあたしの肩に顎をのせて、″はぁーっ″と深い溜め息を吐き出した。
弟である豪を跡取りに選んだのは何故?
その事について何も語らないのは何故?
「豪はお父さんとちゃんと話した?」
「いや…冷静に話し合う気にはなれねーからな…アイツとは」
「アイツなんて…ちゃんと話を…」
「親父の話は終わりだ」
少し低めの声が、あたしの言葉を遮った。
「あ…ごめんなさい」
「わりー…キツく言って」
あたしは静かに首を振る。
「親父の話はまた今度な…」
背中で苦笑する豪を感じる。
そして豪はまた、仁兄と自分の事を話し出した。
「…仁に見せつけてやりたかったんだ…俺も強くなったって所を…でも…アイツは逝っちまった」
ぎゅうっとあたしを抱きしめる腕は、少し震えているように感じた。