愛しの black panther
それはほんの数秒の事だった。
俯く未歩には解らなかっただろうが、あたしには見えていた。
切なそうに未歩を見つめる沢田の姿が…。
きっと沢田も未歩の事は大切なんだ。
なのに…こんなの間違ってる。
「未歩…もう帰れって言っただろ何でここにいる…もうお前に用は無い」
「…やっ…離してっ…あやめの傍にいるっ!」
ばっと腕を振り払い、未歩はあたしに駆け寄った。
「…チッ…勝手にしろ…どうなったってしらねぇからな…」
舌打ちした沢田は、冷たく言い放つと部屋を出て行った。
「…悠くん…」
泣き出しそうな未歩に、かける言葉が見つからない。
「はぁーっ…怒らせちゃった…ごめんねあやめ」
あたしは黙って首を横に振った。