愛しの black panther

「…舐めやがって」



悔しげにそう言った男が、また豪に殴りかかっていく。



そして次々に殴りかかる男達。



「…いや…やめて…やめてよぉ…」



ただ一方的に殴られるだけの豪を前に、何も出来ない自分が情けなくてたまらない。



それは海斗達も同じで、彼等にとって絶対的な存在である豪が、ただ殴られ続けるのを黙って見ているなんて、きっと何よりも耐え難い事のはずだ。



握り締めた拳、噛み締めた奥歯、怒りに震える身体。



誰も目を背けようとはしない。



あたしのせいだ…あたしさえ居なければ、豪も海斗等もこんな目にあわずにすんだはずなのに…。



未だ殴られ続ける豪を前に、あたしは自分の存在を恨んでいた。
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