花は時に牙で噛む【停滞中】
………?
鈍く痛いあたしの左手。
一瞬、呼吸が止まる。
慌てて起き上がる。
今、何時!?
やっちゃった…。
完全に寝てしまっていた。
「もう帰ったよ」
「…えっ?」
まさかと思い隣を見ると、優希の姿。
その膝元には救急箱。
「手、出して」
手…?
ちらっと見ると、両手の傷口には絆創膏。
さっきの鈍い痛みは、優希が手当てしてくれてたんだと気付く。
「もう、大丈夫だよ。それよりお見送り…」
「…腕も出して」
「…お見送り」
「帰ったから、…腕」
あくまでも手当てを続行しよいとしている優希。
お見送りの話は蔑ろにされてしまった。