花は時に牙で噛む【停滞中】
「あぁ、大したことじゃない。」
優希はそんな事を言うけど、これのどこが大したことじゃないのか。
「芽々さんには言うなと言われたのですが…」
心配そうに見つめる橘さん。
「いえ、ありがとうございます。知らせてもらえなかったら殴ってたかも知れません……優希を」
「………」
「………」
暫しの沈黙。
「…冗談です」
沈黙に耐えきれずに言うあたしを、優希は冷たい目で見ていた。
「意識の戻らないような怪我したら、目覚めのチューしてあげるからね?」
冗談めいた事を言ってみても、ますます優希の瞳は険しくなる一方で、哀れみの目であたしを見ていた。
橘さんは、ニコニコしながらそんなあたしを見ていて、逆に恥ずかしくなった。