花は時に牙で噛む【停滞中】


優希は本から目線を外す事なく、鮮やかにあたしの企みをかわした。



「ホントにないの?」


「ない」


「ホントに?」


「ない」




こうなっちゃあ仕方ない。

自分で買ってこよう。





まだ乾ききっていない髪をまとめると、財布だけを持つ。




「どこに行く?」


「ちょっとコンビニ。すぐ帰ってくるよ」



コンビニまでそう遠くはない。
歩いて10分くらいの所にある。



「行ってくるね」



そう言って玄関に向かおうとしたのに、腰に回された腕のせいでまんまとソファに座らされた。



犯人は言うまでもなく優希。



「今日はもう遅い。」


「いや、でもアイス…」


「明日でもいいだろ」


「今、食べたいもん」


「毎日食ってると腹壊す」


「大丈夫だよ」




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