ミモザの呼ぶ声
 オレの脳髄がヤメロと言った。近づいてはならないと。おそるおそる手を差しのばそうとしたとき、

 パシャリ、ジーッ、かしゃ、かしゃ、かしゃ……

 草原の上に転がったぼろぼろの人形に容赦なく降り注いだ最後の日差し。それが血の色のようで、不吉な感覚がして、オレは情けなくもあのときの記憶自体、葬りたくなったときもあるくらいだ。あんな絵を見せられさえ、しなければ!

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