ミモザの呼ぶ声
 翌日。奴は新しいキャンバスを持って現れた。クリーム色をしているのは発色塗料を塗布したんだろう。ただでさえ最近のこいつはアンティーク色の強い作風だったからな。もう枯れてんじゃないか?
 オレは腹で嘲笑っていた。間に合わねえよ。今からじゃあな。オレの方は仕上げにかかっている。
 ところがだ。なんと奴は昨日までどころか今までの手法すべてを否定するように、とんでもない荒技にでた。
 キャンバスの端から、大胆に、どうどうと絵の具を置いていった。
 それは点描写。まるで記憶の中の絵を画素の細かい、デジタルで写し取ったロボットの絵のようだった。
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