ミモザの呼ぶ声

 ハア、ハア、ハア、……

 天地がぐらぐらするほどの眩暈に襲われて、オレは膝に突っ張ってた腕をずるりと地へ放った。
 ない。ないない、ない! 何処へ消えた、あの性悪犬!
 獣の分際でこのオレの妹の、美優の人形、咥えて行きやがった!
 また勝手に家にもぐり込んで来やがって! よりにもよって、あの、美優の、たったひとつの父親の形見を!
「ゆる……さねえ……!」
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