ミモザの呼ぶ声
 オレは単純に計算して四年までに完成できるよう、単位は速やかにギリギリいっぱいまで取り、さっそく卒業制作に取りかかる準備を秘密裏にしていた。
 だが、オレの独断とスタンドプレーは教授にばれた。ところが、教授はその存在と同じくらいふわふわした口調で、

「将来の展望があるのはいい。ここまで意欲を燃やしているのなら留める理由はもうない。好きなだけやりなさい」

 当たり前だ。オレは教授の言葉がすとんと胸に落ちた。なんのために基礎を磨いてきたか? なんのために多くの単位をとり、この日を待っていたか。
 オマエにはわかるまい。トリウミカズヤ。オレだってただ美術が得意だっただけで、この大学へ入ったワケじゃない。それなりの辛酸は舐めたさ。
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