先生、好きなんです。
第 1 章
――――春
入学式も終わり、やっと一息つけるようになった。
教室の窓から外を見ると、そこにはピンクの世界が広がっていた。
「……桜……」
そう呟いたのは、山城 ほのか(やましろ ほのか)。高校1年生。
「…――しろっ!…山城っ!」
「―――っはっはい!!」
ほのかは、ずっと呼ばれていたことに気付き、返事をしながら勢いよく立ち上がった。
クラスからは、わっと笑いが湧き起こる。
(は、恥ずかしい…!)
かなり恥ずかしかったため、顔を真っ赤に染め上げ、ササッと素早く座った。
「ボーッとすんなよ〜!まだ春休みモードか?」
担任の一言に、またもやクラスから笑いが起こる。
担任の名前は、神崎 結城(かんざき ゆうき)。25歳のやや新米教師だ。
「…は、はい…」
も、もう止めて……!
「…じゃあ、面白いってことで、お前数学係な」
「…………え?」
ほのかは、キョトンと結城のことを見つめる。
そして、やっと頭の中で言われたことを理解できた。
「す、数学係!?」
「そ。数学係。ちなみに俺の教科だから。…じゃあ次、音楽係やりたい奴いるか〜」
結城の質問に、何人かの生徒が手を挙げているのを一瞥してから、ほのかは結城のことを見る。
すると、目が合った。
「……っ!?」
(わ、笑われた!!しかも鼻で!鼻で笑った!!)
目が合った瞬間、結城に、鼻で笑われたのだ。…不敵な笑みを浮かべながら。