先生、好きなんです。
すごい。
なんでも「あっそ」って感じの男が、こんなにも歴史食いつくなんて…かなり意外。
「歴史好きなんですか?」
「全くっ!」
そ、即答…。
「んでも、今の山城の言葉とか表情とか見て、歴史って面白いんだって興味持った」
「…そうですか」
自分のあんなまとまりのない言葉で、興味を持ってくれるなら…ずっと語っていたい。日が暮れるまで。
歴史好きからしたら、歴史に興味を持ってくれるってことは、すごい嬉しいことだから。
ほのかは、笑みを浮かべながら歴史を語る、語る、語る。
結城は、ほのかの楽しそうに話す姿に何だか心地好い気分になった。…この笑顔は、世界を救うかもしれない。
とか、クサイことを思いながらも、目的を忘れて、ただひたすらほのかの話を聞いていた。
話始めて数時間―――…
「…え!?もうこんな時間!?」
ふと時計を見ると、針は夕方6時を指していた。
こんなにも歴史について語っていた自分が、なんだか恥ずかしくなる。
「お、最終下校じゃん」
結城は、時間を見てもさほど気にせず、窓から外を見て「暗ぇ」と呟きながら帰りの用意をし始めた。
それと同時に、ほのかも立ち上がって、コートを羽織る。
「てかプリント…全然解いてないし」
そういえば、なんでここに来たんだっけ。
…つか、どっから歴史の話になったんだ?
「うわぁ、お前ほんと数学苦手なんだな」
「きゃ!見ないでください!」
プリントを結城に覗かれ、急いで隠すほのか。見られてる故にかなり無意味な行動だ。
「いいじゃねぇか。歴史の話聞いてやったんだから」
「いやいや、聞いてきたのは先生でしょう?」
ほのかは、ハァ…とため息を尽き、プリントとふでばこを鞄の中へ詰め込んだ。
「じゃあ、私はこれで帰ります」
「さようなら」と言いかけたが…結城に「ちょっと待て!」と言われ、大きな声で掻き消されてしまった。
「なんですか?」
「校門で待ってろ!」
「…………は?」