愛しすぎて

帰り道､私たちは一つの傘を共有しながらゆっくりと歩いていた。
先ほどよりも雨足は強くなっている。


「真姫。濡れてない？」

「大丈夫」


幸宏は心配そうに私を覗き込んでくる。
一人用の傘に二人も入っているのだ､濡れるのは仕方ない。

だけど私は地面に跳ね返った雨が靴下を濡らす以外は全くと言っていいほど濡れていなかった。

反対に幸宏の左側はビッショリと濡れ､制服の色が濃くなっている。


「幸宏､濡れてるよ」

「俺はいいの」

「風邪引くよ？」

「真姫に風邪引かすよりはだいぶマシ」


そう言って傘を私の方へさらに傾けてくる。
これでは幸宏がずぶ濡れになってしまうと思った私は強引に幸宏の方へと傘を押しやった。

それでも幸宏はなおも私の方へ傘を傾ける。

そんな事を繰り返しているとあっという間に自宅へ到着していた。

< 10 / 11 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop