愛しすぎて
放課後になり、私が今日の掃除当番なのだと気付いた。
名前の響きに惹かれて入った美化委員会は毎日当番制で校内の掃除をしている。
今日は私が校内清掃をする日だ。
「真姫。あたし今日デートだから手伝えないんだ。ごめんね
「いいよ、気にしないで。楽しんで来てね」
「ありがとう。じゃあ、また明日」
「また明日」
千春は新しく出来た恋人とのデートのため、急いで帰って行った。
笑顔で千春を見送った私はまず中庭から掃除をしようと、中庭へ向かった。
その途中ある教室の前を通った時、女子の黄色い声が聞こえてきた。
何事かと思い、チラリと教室内を見ると幸宏を女子が楽しげに囲っていた。
「一緒に帰ろう」
「デートに行こう」
女子達はしつこく誘っているが、輪の中心にいる幸宏はそれらの誘いをさらりと交わしている。
私はそれに小さく安堵した。
「あ、真姫」
ずっと突っ立っていたせいか幸宏に気付かれてしまった。
女子達も私の存在に気付き、先程までの可愛い笑顔を隠し私を睨み付けてくる。
気まずくなった私は呼び止める幸宏の声も聞かず、走り出した。