愛しすぎて
中庭に着くと私は乱れた息を直そうと膝に手をつき、肩で息をした。
「慣れないダッシュするからだよ」
「…幸宏」
私は全力疾走したというのに幸宏はあっさり私に追い付き、息も乱れていない。
女と男とはこんなに差があるのだろうか。
「何で逃げたの?」
「急いでただけだよ。今日、掃除当番だから」
「あー、じゃあ待ってて。すぐ終わらせるから」
そう言うと幸宏は掃除用具入れからホウキを取り出した。
「え、いいよ。私やるから」
「ダメ。真姫に掃除なんかさせられない」
そう言うと幸宏は地面を掃き始めた。
私が困り果てオロオロとしていると苦笑した幸宏は「じゃあ、真姫はチリ取り係ね」と言い、用具入れからチリ取りを取り出して私に渡した。
「全く女の子1人に校内の掃除させるなんて馬鹿な学校だな」
「でも私はまだ幸宏が手伝ってくれるから楽だよ」
「当たり前だよ。真姫1人にこんな広い学校を掃除させてたら日が暮れるね」
自信満々に言う幸宏に少しムッとしたが手伝ってくれる事に感謝していたため、何も言わなかった。
「真姫、チリ取り」
「はい」
私が屈もうとすると幸宏がホウキを私に差し出し、チリ取りを手に取った。
「屈んだらスカート汚れるだろ。交代な」
「ありがとう」
幸宏は「いいえ」と小さく言うとゴミの前に屈み、私は幸宏の構えるチリ取りの中にゴミを収めていった。