【短】ワガママ男とわがまま女


「すぐ市崎くん勧めるのやめてよね。ほんっと、ミドリは市崎くんラブなんだから。」

「ちょっと。ラブなんかじゃないわよ。」


わたしの隣の隣のクラスで、ミドリと同じクラスの市崎くん。

ミドリはわたしが樹の話をするたび、やたらと「爽司みたいなヤツ」って感じで勧めてくる。

市崎くんラブって言うのは冗談だけど、ミドリは市崎くんが好きだ。

恋愛対象としてじゃなくて、友達で。

付き合うなら、市崎くんみたいなタイプの人がいいらしい。


まぁ、本気で好きだった頃もあったらしいけど......。



「爽司は彼女できたの。一年の子。」

「へぇ~。ミドリ、ショックなんじゃない?」

「いーえ。その子、すっごい良い子だから! 私も嬉しいの。」



さっきとは打って変わってニッコリ笑ってみせる、可愛らしいミドリ。

いつもこんな感じでニコニコしてたら、『高飛車』だとか『感じ悪い』だとか変な誤解されることもないだろうに。

ミドリは、面倒見が良くて、いつでも相談乗ってくれるし、すっごく良い子なのにな。

誤解されやすいところとかもひっくるめて、わたしはミドリが好きなんだけどね。



< 8 / 28 >

この作品をシェア

pagetop