【短】ワガママ男とわがまま女
「すぐ市崎くん勧めるのやめてよね。ほんっと、ミドリは市崎くんラブなんだから。」
「ちょっと。ラブなんかじゃないわよ。」
わたしの隣の隣のクラスで、ミドリと同じクラスの市崎くん。
ミドリはわたしが樹の話をするたび、やたらと「爽司みたいなヤツ」って感じで勧めてくる。
市崎くんラブって言うのは冗談だけど、ミドリは市崎くんが好きだ。
恋愛対象としてじゃなくて、友達で。
付き合うなら、市崎くんみたいなタイプの人がいいらしい。
まぁ、本気で好きだった頃もあったらしいけど......。
「爽司は彼女できたの。一年の子。」
「へぇ~。ミドリ、ショックなんじゃない?」
「いーえ。その子、すっごい良い子だから! 私も嬉しいの。」
さっきとは打って変わってニッコリ笑ってみせる、可愛らしいミドリ。
いつもこんな感じでニコニコしてたら、『高飛車』だとか『感じ悪い』だとか変な誤解されることもないだろうに。
ミドリは、面倒見が良くて、いつでも相談乗ってくれるし、すっごく良い子なのにな。
誤解されやすいところとかもひっくるめて、わたしはミドリが好きなんだけどね。