<完> 冬桜よ、散りゆけ  –諦めるべき恋なの?–
「桜。」

 海翔の声に桜は我に返った瞬間、雪の球が肩を直撃した。
 ジャンパー着てたから、冷たさと痛さは何もない時の半分ぐらいしか感じない。

 だけど、桜にとっては何もない時の二倍ぐらい冷たさと痛さを感じた。

 
――もう、これ以上、こうしてはいられない。投げなきゃ・・・。――

 子どもの遊びはしたくなかったのに、しなきゃいけない現実が冷たくぶつかってきた。

 それを乗り越えることは不可能だと、桜は悟った。


「桜らしくないなぁ。」

 海翔の一声がさらに追い打ちをかけた。
 言った本人は、ただ桜がこういうことに興味ないことに驚いただけだったのだが。

 雪が桜の頭に落ちた時、桜は球を作り海翔に投げた。

「ぐぅぅ。」

 海翔の首に的中し、かなり苦しかった。
 桜は、しまったっという顔をした。

「姉ちゃんやるじゃん。みんなもっとやろう。」

 檀の声にこたえるように、皆投げ合いだした。

 桜はうつむきながら、投げていった。



< 10 / 257 >

この作品をシェア

pagetop