<完> 冬桜よ、散りゆけ  –諦めるべき恋なの?–
「希欧、本当だよね。」

 今の発言、のちの桜の記憶にはない。

 無意識に出た言葉だ。

「本当だよ、本当だよ。」

 この声で、桜の意識が少し回復した。

 大きくて、なおかつ真意が感じられるような声。

 希欧の顔はまるで純粋な子供のようだ。


「希欧ね、分かったの。
 春増くんはとてつもなく嫌な奴だって。

 だって、人の悪口平気で言うんだよ。
 この間ね、希欧の悪口言っているとこ見て聞いちゃったの。
 もう絶望した。」 

 桜は相槌を打つ。

 ふと希欧の表情に注目すると、少し険しくなっている。

 きっと、悪口言われてショックだったんだろうな。

 “絶望した”

 この口調は怒りと悲しみの両方を感じるからね。





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