<完> 冬桜よ、散りゆけ  –諦めるべき恋なの?–
 桜は海翔を無視している。

 希欧に無視されたからわかる。無視されるのがどれだけつらいか。

 海翔だって、桜に無視されてつらいはず。

 今の事件だって、見て見ぬ振りすることで来たのに。

 でも、なぜ助けたの?

 桜の頭によぎる。


「あなたを助けずにはいられません。」

 海翔は久しぶりに、桜の目の前で笑ったような気がする。


――いや、こんなのお世辞だよ。――

 そう思っても、心が温かい。

 思わず、桜の体中が解放されたような。

 さっきまでの苦しみ、恐怖はどこへやら。

 桜は立ち上がる。

 海翔も寄り添うように立つが、

「大丈夫よ。」

 海翔が間近にいるのは恥ずかしい。




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