<完> 冬桜よ、散りゆけ  –諦めるべき恋なの?–

六 旅立ちの時=決断の時

 あっ。

 今は三月。もうじき卒業式。
 学校の昼休みで、ぼけっと壁に寄りかかっていたんだ。

 いけない、また思い出していた。

 海翔を好きになってから、このように記憶がよみがえってしまう。
 一日に一回ぐらいは。

 つらい思い出。

 思い出すだけで嫌なのに、なんで思い出してしまうのだろう。

 自問自答してしまう。


 とりあえず壁から身を離す。

 少し歩く。

 美術室の後ろにある扉から、中を覗くようにして時計を見ると、そろそろ昼休みが終わる時間だ。

 いけない、とにかく教室に戻らなきゃ。

 一歩、二歩歩き始める。

 走らない。

 まだ時間はある。



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