<完> 冬桜よ、散りゆけ  –諦めるべき恋なの?–
「よぉ~し、やるぞ。」

 海翔の高い声が、住宅街の一角にある公園中に響き渡る。

「えい。」

 班の小三の男の子が、桜たちに向かって投げた。

「うぎゃ。」

 たまが美紫依の頬に命中した。


「もう、投げようよ。」

 美紫依が桜に向かってこう言う。桜は呆れ顔で聞いていた。
 美紫依の怒りは、爆発寸前だってわかっていた。

 桜は、あまりこういうことに加わりたくないっと思っている。
 あまりにも子供な遊びをしたくないからだ。
 となると、海翔に向かって球を投げたことを後悔した。

 かといって止めることはできない。
 だから、桜はそおっと抜けて見守りたいと思っていたが、美紫依の言い方からそれを許してはくれなかった。


 雪は変わらず降り続け、積もり続けていた。
 冷たさが、桜の心に染みこみ、苦しませていた。

 
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