17歳の不良と6歳の殺し屋

「ねぇ」

私の声が狭い部屋の中に響く。お茶を味わうように伏せられた少女の長い睫毛がピクリと反応した。
コトリ、と翠は湯飲みを置く。パッチリと開いた瞳が私を見る。

「アンタ、何しにここに来たの?」

「先程の通りだけど?」

翠はキョトンとした顔で言って来た。自分の中に苛立ちが起こる。

「馬鹿にしてるの?」

「何が?」

私は一つ、はぁっとわざとらしい溜息を吐いた。そしてギロッと日本人形の様な少女を睨む。

「あの母親と一緒に扱わないで。虫唾が走る」

「……」

彼女から笑顔が消えて、体もピクリとも動かなかった。ただ私の瞳を真っ直ぐに見ている。
異様な威圧感を感じたが、私は構う事なく言葉を投げ続ける。

「あんな馬鹿な女捕まえて何をしようって言うの?金ならどう考えてもアンタ達の方が持っているように見えるんだけど?」

「……」

彼女はやはり黙っていた。私はここで沈黙になるのが嫌でさらに話を繋げる。

「金が目的って事はないだろうね。という事は私達、個人個人の問題かな?」

私は探る様に彼女のその大きな瞳を見た。彼女のほんの少しの動きも逃さないように。
すると、彼女の表情がスッと緩んだ。
それに少し度肝を抜かされると、その天使の様な微笑みは一瞬にして悪魔のような残忍なものになった。

「失礼。こちらの情報が手緩いので、対応に困っていたのよ」

ハキハキとした喋り方。見た目とのギャップがあまりに大きく、言葉が出なかった。


「お前が関ケ原 雫?」

「随分あっさり正体を見せるんだね」

私の心臓がバクバクと大きく唸る。それでも静かな声と表情が出来た。
翠は面白そうに笑うと髪をサラリと片手で流した。
それを見た私は、少し不快な気持ちになった。

「ねぇ、」

いまいち、この雰囲気に合わない声が出た。向こうもそう思ったらしく小さな眉を顰めてコチラを向いた。

「会った時から思ってたんだけど、アンタ見てて何か不自然だ」

私の言葉に一瞬ポカンとした翠の顔。しかし、次の瞬間には口元に手を置いて苦しそうに笑い出した。

「ふっくっくく…!!ダメだ。笑っちゃう!」

「…何?」

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